Rhinoceros では最終的にブール演算で複数のパーツを一つにオブジェクトにまとめる場合があります。特に3Dプリントで造形するなら STLファイルとして保存する際に必須と言えます。
エンゲージリングのデザインではセンターストーンの石座・脇石の石座・腕パーツのように構成されているものも多く、手仕事で地金から加工する場合はパーツ同士をロウ付けしていきます。デジタルでもアナログでも結局のところ、同じような工程があるのは面白く思えます。
しかしながらデジタルとアナログの相容れないところも当然ながら存在します。デジタルではパーツの結合は元のオブジェクトが単純にブール演算で処理されますが、アナログではロウ付けに使うロウ材が接合面からいくらか流れ出ます。工房によって考え方の違いはあるでしょうが、ロウ材が少ないと強度不足になるので、それを避けるためにも少し多めのロウ材を接合面からムラのないように程よく溢れるようにする事で見た目も強度も保てます。
Rhinoceros に話を戻しますが、このロウ付けの仕上がりはフィレット系のコマンドのFilletEdgeやBlendEdgeで再現できます。4本爪ソリテール型のエンゲージリングを例にロウ付けを再現してみます。
4本爪ソリテール型でロウ付けを再現
石座・爪・腕が別々のオブジェクトで構成されている4本爪ソリテール型のデザインです。
まず、別れたパーツをブール演算・和のBooleanUnionで一つのオブジェクトに結合します。
ブール演算で結合されてできたエッジに対して、フィレット系のコマンドのFilletEdgeやBlendEdgeを実行します。今回はロウ付けの再現なので径の数値は控え目に半径0.07を指定して実行しています。
フィレット系コマンドは角を丸める目的で使われる事が一般的ですが、谷のようになっているエッジに対しては埋まるような状態になります。
もっと単純なオブジェクトで見てみます。2つの球体を結合した雪だるまのようなオブジェクトを用意しました。
球体同士が結合した境界エッジにフィレットをかけるとこのようになります。球体がなだらかに繋がり、ピーナッツのようになりました。
ロウ付けを再現するフィレットの使い所としては以下のような感じでしょうか。
- 結合部分の強度不足を補う
- パーツ同士の結合を自然に見えるようにする
3Dモデルを WebGL など CG で表現する際、オブジェクトの角や谷がそのままだと不自然な印象を与えます。その場合はフィレットを少しかけるだけで CG の仕上がりが変わります。
少し変わった逆フィレットですが、知っていると便利な使い方だと思います。